大人の引きこもりの長期化で、8050問題が深刻化しています。また昨今は、就労経験がある人が引きこもり、そのまま50代に至り、8050問題につながるケースもあります。大人の引きこもりには、具体的にどのような問題があるのでしょうか。
この記事では、大人の引きこもりの問題点や8050問題が深刻化する社会的背景を解説。引きこもりに関する公的な相談窓口も紹介します。
大人の引きこもり「8050問題」とは
8050問題とは、80代の親が50代の子どもの世話をすることで生じる社会問題です。長期間子どもが働かずに引きこもり、経済的に高齢の親を頼っています。
以前は引きこもりは若者に多かったのですが、若年層の引きこもりが長期化することで現在では中高年の引きこもりも多く、社会問題となっています。
大人の引きこもりの問題点
大人の引きこもりの問題点は次のとおりです。
- 親が倒れて介護が必要になるリスク
- 孤独死のリスク
- セルフネグレクトの問題
- 9060問題への移行
- 経済的な困窮
それぞれについて詳しく解説します。
親が倒れて介護が必要になるリスク
親の高齢化が進むと、親の介護が必要になる可能性が高くなります。子どもの身の周りの世話を親がしていた場合、子どもが自分自身の生活を維持することも難しくなるでしょう。介護に必要な手続きなども分からず、親の介護が放ったらかしにされるケースもあります。
孤独死のリスク
8050問題では高齢の親が亡くなった場合は、社会と隔絶された子どものみが自宅で暮らすことになります。
親に頼りきっていた子どもが病気になった場合、自分で病院に行けない可能性があります。近隣住民や親戚とも疎遠で助けを求めることができずに、生活環境が悪化。最悪の場合、孤独死にいたるケースも。
日本少額短期保険協会が公開した孤独死に関する440件のデータによると、各年齢別の孤独死の数は次のとおりです。
60~69歳の孤独死が最も多い結果でした。さらに死因は病死によるものが半数以上を占めた結果でした。
引きこもりを続けて、親が無くなり単身世帯になると、60代を迎えるころに病気による孤独死のリスクが高まります。
セルフネグレクトの問題
セルフネグレクトとは、生活を維持する能力や意欲を無くして、自身の健康や安全を損なう状況に陥ったことを指します。
たとえば、ごみを放置して家がゴミ屋敷になったり、必要な治療を受けずに病気が悪化したりするのです。引きこもりが長期化すると、判断力が低下し、命が危険な状態になっても自覚できないことで、セルフネグレクトが深刻化するといわれています。
9060問題への移行
80代の親と50代の子どもの年齢がさらに高齢化して、9060問題へと移行する可能性があります。
高齢化した親が認知症を発症して、生活が成り立たなくなるリスクがあります。また子どもも高齢化するほどこだわりが強くなり、周囲がかかわることが一層難しくなるのです。
子どもが介護ヘルパーを追い返してしまい、親が介護サービスを受けられなかったケースもあります。
経済的な困窮
親が現役で働いている場合は、経済的に問題がない場合もあります。しかし親が仕事を退職した後は、親と子どもの生活費を親の年金に依存することも多いです。
年金だけでは子どもの生活まではサポートできずに、生活が困窮します。親が亡くなったあとは、年金も受け取れないため子どもはさらに生活が困窮する可能性もあります。
就労経験のある大人の引きこもりで8050問題が深刻化
就労経験のある大人の引きこもりが増えているため、8050問題が深刻化しています。ここでは、8050問題が深刻化する社会的背景や大人がひきこもるきっかけについて解説します。
8050問題が深刻化する社会的背景
現在の日本では、就労経験のある人が引きこもりになる事例が増えています。もともとは、子どもの頃の不登校や就職氷河期で就職に失敗した人たちが、学校や仕事に行けない状況が継続することで、大人の引きこもりがおこると考えられていました。
しかし現代の8050問題が深刻化する背景には、不登校や就職氷河期以外にも、一旦は仕事に就いたが挫折して引きこもりになっている人も多い点もあげられます。実際に、引きこもりのきっかけの多くは「退職したこと」とする調査結果もあります。
引きこもりのきっかけは「退職したこと」
内閣府の調査によると引きこもりの状態になったきっかけは、次のとおりです。
きっかけ | 人数 | 割合 |
退職したこと | 17人 | 24.6% |
人間関係がうまくいかなかったこと | 10人 | 14.5% |
病気 | 10人 | 14.5% |
職場になじめなかったこと | 9人 | 13.1% |
就職活動がうまくいかなかったこと | 3人 | 4.3% |
その他 | 20人 | 29.0% |
合計 | 69人 | 100.0% |
上記から、退職が引きこもりのきっかけになったとの答えが最も多い結果でした。8050問題を解決するためには、仕事で挫折した人が「また仕事をはじめよう!」と考えられるように、引きこもりから社会復帰を促すためのプログラムや支援を充実させることが大切ではないでしょうか。
8050問題や引きこもりに関する相談窓口
8050問題や引きこもりに関する相談窓口は次のとおりです。
- 引きこもり地域支援センター
- 精神保健福祉センター
- 当事者・家族会
- 生活困窮者の自立支援機関
各施設について詳しく解説します。
引きこもり地域支援センター
引きこもり支援センターは2009年に設置されました。引きこもりに関する悩みを中心に相談を受ける施設です。
引きこもりの当事者や家族から相談を受けて、就学や就労を目指すためにさまざまな専門家や関係諸機関と連携を図り、社会復帰をサポートします。
社会福祉士が電話で相談を受け付けたり、精神保健福祉士が社会復帰をサポートしたりしています。引きこもりの支援を行う人は引きこもり支援コーディネーターとも呼ばれます。
精神保健福祉センター
精神保健福祉センターは、心の病に関する相談や精神疾患を持つ人の自立や社会復帰をサポートする施設。
精神保健福祉士や臨床心理士、保健師などの専門知識を有する人の支援を受けられます。各都道府県や政令指定都市に設置されています。
当事者・家族会
当事者・家族会は、引きこもりの悩みを抱える当事者や家族を支援する施設です。引きこもりの当事者や家族が仲間として助け合うことで、引きこもりによって社会から孤立することを防ぎます。
引きこもりの問題についての社会的認知を広くを促すための講演会や学習会、セミナーなどの活動も実施しています。
生活困窮者の自立支援機関
働きたくても働けない人や住むところがない人に対して、生活全般にわたる相談を受け付ける施設です。全国各地に施設が設けられているため、生活に困窮した場合は相談するとよいでしょう。
専門の支援員が諸機関と連携しつつ、引きこもりの当事者に寄り添いながら経済的自立を支援します。
引きこもりによる8050問題の解決に取り組もう
大人の引きこもりの長期化による8050問題が深刻化しています。引きこもりのままだと、親子で経済的に共倒れしたり、孤独死したりするリスクがあります。
従来は不登校の延長による大人の引きこもりが多かったのですが、現在は就労経験のある人が引きこもるケースも増加。
仕事の挫折が原因で引きこもりを続けている場合は、まずは公的な施設に相談して生活を立て直して、仕事に復帰できる環境を整えるとよいでしょう。
また精神疾患や障害を抱えている方が引きこもりから復帰する場合は、就労継続支援施設を利用するのもおすすめです。
就労継続支援施設は、精神疾患や障害を抱えた人が働きやすい環境を提供する民間の施設。条件を満たすと無料で利用できますので、まずはケイエスガードにお問い合わせ下さい。