長期にわたって引きこもりをすると、なかなか社会復帰するのが難しいといわれています。
この記事は「長期間の引きこもりから社会復帰するのはムリ?」「どうやって引きこもりから復帰する?」と疑問を抱える人に向けた記事です。長期引きこもりの実態と原因、引きこもりから復帰する方法を解説しますので、ぜひご覧ください。
引きこもりの定義
厚生労働省が定める引きこもりの定義は、次のとおりです。
仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6か月以上続けて自宅にひきこもっている状態
引用:厚生労働省ホームページ
引きこもりには、精神疾患や障がいだけではなく、さまざまな要因が関係しています。若年層から中高年まで幅広い年代の引きこもりがいます。次に、引きこもりの実態や原因について解説します。
長期引きこもりの実態
ここでは、長期引きこもりの実態について内閣府と全国ひきこもり家族連合会の調査結果をもとにお伝えします。
内閣府の調査
内閣府が平成27年と平成30年に行った年齢別の引きこもりに関する調査を紹介します。
平成27年の調査(対象15~39歳)
15~39歳の引きこもりになってからの期間は次のとおりです。
15~39歳の若年層において、3年以上引きこもる人の割合が多い結果です。とくに、30歳を超えると90%以上が3年以上引きこもっています。10人のうち9人が3年以上引きこもっていることになります。
平成30年の調査(対象40~64歳)
40~64歳の引きこもりになってからの期間は次のとおりです。
40歳以上になると、さらに引きこもりが長期化し、30%近くが10年以上引きこもっています。とくに40代の引きこもりの多くが、3年以上と長期化しているようです。内閣府の調査からも、引きこもりが長期化している実態がわかります。
KHJ 全国ひきこもり家族会連合会の調査
特定非営利活動法人KHJ 全国ひきこもり家族会連合会は引きこもりを対象とした調査を実施しました。アンケートの対象者は引きこもりのための月例会に参加した52人(対象年齢:17~52歳)です。その結果は次のとおり。
引きこもり期間の平均は8.1年で、最大は32年です。内閣府の調査に比べると、引きこもり期間が短いようです。しかし平均8.1年であることを考えると、引きこもりは長期化しやすいことがわかります。
引きこもりが長期化する原因
ここでは、引きこもりが長期化する原因について解説します。さまざまな要因が考えられますので、原因をはっきりさせる際には参考にしてください。
引きこもりの最大のきっかけは仕事
内閣府のアンケート調査では、若年層と中高年のどちらも、引きこもりの最大のきっかけは仕事であることがわかりました。
15~39歳への調査結果
15~39歳への調査結果でわかった引きこもりのきっかけは次のとおりです。
原因 | 人数 | 割合 |
退職したこと | 17人 | 24.6% |
人間関係がうまくいかなかったこと | 10人 | 14.5% |
病気 | 10人 | 14.5% |
職場になじめなかったこと | 9人 | 13.0% |
就職活動がうまくいかなかったこと | 3人 | 4.3% |
その他 | 20人 | 29.0% |
合計 | 69人 | 100.0% |
(参考:長期化するひきこもりの実態|内閣府をもとに作表)
若年層の引きこもりの主な原因は「退職した」「職場になじめなかった」「就職活動がうまくいかなかった」などの就労に関する理由と、不登校などの就業に関することです。
画一性を重視する日本社会では、就労や就学をしないことで、みんなと違う状況におかれることに罪悪感を覚えやすいといわれています。その結果、社会に援助を求められずに引きこもりが長期化している可能性があります。
40~64歳への調査結果
40~64歳の引きこもりのきっかけは次のとおりです。
原因 | 人数 | 割合 |
職場になじめなかった | 9人 | 14.5% |
不登校 | 9人 | 14.5% |
就職活動がうまくいかなかった | 8人 | 12.9% |
人間関係がうまくいかなかった | 8人 | 12.9% |
病気 | 7人 | 11.3% |
その他 | 21人 | 33.9% |
合計 | 62人 | 100.0% |
(参考:長期化するひきこもりの実態|内閣府をもとに作表)
40~64歳も就労や就業で挫折したことがきっかけで引きこもりになった人が多いです。
とくに、就職氷河期世代の40~44歳は長期引きこもりが多い世代です。その理由として、就職氷河期に就職自体ができずに、そのまま引きこもりが長期化してしまったケースが考えられます。
また希望の就職先や職種に就けないことで、挫折を経験して職場になじめずに引きこもりが長期化してしまったとも考えられます。
精神疾患の影響
内閣府の調査では、引きこもりのきっかけとして病気を挙げている人が一定数いました。引きこもり自体は病気ではないのですが、精神疾患が関係している場合は多いのです
厚生労働省の調査によると、精神疾患の外来患者数が年々増加傾向です。
とくに、気分障害(うつ病)や神経症性障害、ストレス関連の障害などは、H14とH29で比較すると倍近く伸びています。これらの精神疾患は、引きこもりで罹患することの多い疾患です。精神疾患で引きこもりになっている人も、増加傾向であると予想できます。
人間関係についての不安
引きこもる以前に、人間関係で大きなストレスを抱え、その環境下で頑張ろうとして疲労感や挫折感を覚えて引きこもりになるケースもあります。
再び社会に出て人間関係によるストレスにさらされることに嫌悪感を覚え、引きこもりが長期化。また引きこもる自分自身に対する周囲の評価にもおびえてしまい、ますます引きこもりを克服できない心理的状況に追い込まれます。
生活習慣の乱れ
昼夜が逆転した生活を続けることで、体内時計が狂ったり、ホルモン分泌に不調をきたしたりすると引きこもりから社会復帰しづらくなります。
昼間に仕事をするためには、生活のリズムを整える必要があるのです。社会復帰までに時間がかかってしまい、途中で挫折して引きこもりが長期化すると考えられます。
引きこもりが長期化するリスク
10年や20年と引きこもりが長期化すると、8050問題や9060問題で将来の状況が深刻化する可能性があります。
8050問題とは80代の親が50代の子どもの面倒を見ること。9060問題は8050問題がさらに進行した状況で、90代の親が60代の子どもの面倒を見る状態を指します。
親が現役を退いたあとも子どもが経済的に依存するため、親子共に生活が困窮することも多いです。親が先に亡くなった場合は、子どもが孤独になるリスクもあります。
8050問題については、次の記事も参考にしてください。
引きこもりが長期化しても社会復帰は可能
引きこもりが長期化すると、社会復帰は難しいといわれます。しかし、現実を見つめて対処すれば社会復帰は可能です。
ここでは、長期の引きこもりから社会復帰した人の客観的データを示します。さらに、ひきこもりで病気になった場合の対処法についても紹介しますので、参考にしてください。
30年以上の引きこもりから立ち直った人もいる
内閣府の調査によると、過去にひきこもりの状態であった期間は次のとおりです。
以上の結果は、引きこもりを克服した人に向けて行われたアンケート結果です。結果をみると、6ヶ月~2年の比較的に短期間が多いため、引きこもりの期間が短い方が社会復帰を果たしやすいことがわかります。
その一方で、半数以上が3年以上の引きこもりを経験したと回答しています。つまり、引きこもりが長期化すると社会復帰は無理なわけではないのです。さらに30年以上の引きこもりから立ち直った人も6.7%存在します。
引きこもりから社会復帰する方法については、次の記事を参考にしてください。
引きこもりで病気になった場合の対処法
引きこもりで病気になった場合、社会復帰することが難しくなります。そのため、まずは病気を克服することが大切です。ここでは、引きこもりで病気になった場合に社会復帰を果たすための方法を紹介します。
引きこもり地域支援センターに相談する
精神疾患を抱えて引きこもりを続けている場合は、まずは精神疾患に対してサポートを受けましょう。しかし、引きこもりの問題に十分に対応できる医療機関が見つからないかもしれません。
適切な医療機関を見つけるためには、引きこもり支援センターに相談するとよいでしょう。専門のコーディネーターが医療や雇用、福祉などに関連する機関と連携して引きこもりからの社会復帰をサポートしてくれます。
就労継続支援施設に相談する
精神障害や精神疾患を抱えている場合は、就労継続支援施設でサポートを受けながら働けます。通常の職場で働くことが難しい場合や不安な場合は相談するとよいでしょう。
就労継続支援には、雇用契約を結ぶA型と、雇用契約を結ばずに自分のペースで働くB型があります。詳しくは次の記事を参考にしてください。
長期の引きこもりからの社会復帰は可能!
長期の引きこもりから社会復帰をすることは可能です。内閣府の調査でも30年以上の引きこもりから復帰した人が一定数存在することがわかっています。
引きこもりから復帰したい場合は、ひきこもり地域支援センターや就労継続支援施設に相談するとよいでしょう。
就労継続支援施設のケイエスガードでは、引きこもりから復帰するための相談を受け付けています。詳しいサービス内容を知りたい場合は、お問い合わせや資料請求をご利用ください。