抑うつ症状と躁症状を交互に繰り返していく、双極性障害。
中でも特に本人が苦しむと言われているのが「ラピッドサイクラー」と呼ばれる状態です。
ラピッドサイクラーは別名「急速交代型」とも呼ばれており、双極性障害に特有である「気分の波」が訪れる頻度が高く、変動が大きい状態を指します。
この記事では、双極性障害のラピッドサイクラーについて詳しく解説します。
あわせて治療法や治療薬についてもご紹介しますので、お困りの際にはぜひ参考にしてください。
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双極性障害の「ラピッドサイクラー」とは
双極性障害のラピッドサイクラーとは、双極性障害の気分の波(うつ症状、躁症状、混合状態)を1年に4回以上繰り返す状態のことをいいます。
別名「急速交代型」とも呼ばれており、双極性障害のI型、II型どちらにも現れる可能性があります。
また場合によっては、「数週間で2つ以上の気分の波を行き来する」というケースもあり、症状の変動の大きさにともなって、治療も困難になると考えられています。
参考:「双極性障害とは?どんな症状かわかりやすく解説」
双極性障害ラピットサイクラーになる原因は?
双極性障害のラピッドサイクラーになる原因については諸説ありますが、リスクを高める要素として、次の3つが挙げられています。
順番にみていきましょう。
①再発を繰り返している
双極性障害は、再発率の高い病気として知られています。
症状が安定せず再発を繰り返しているうちに、躁症状とうつ症状の変動間隔が短くなることがあります。
その結果、ラピットサイクラーに至ることが少なくありません。
再発の危険因子は様々ですが、例えば薬物治療の効果が思うように得られない、本人が内服や通院を守らない、生活習慣の乱れなどが再発のリスクとして挙げられます。
②三環系抗うつ薬を使用
抗うつ薬の中でも「三環系抗うつ薬」は、ラピッドサイクラーに移行するリスクが高まるとされています。
しかし近年「三環系抗うつ薬」は、双極性障害の治療薬としては一般的ではないとも言われています。
双極性障害の診断は難しく、うつ症状のときに「うつ病」と診断され、三環系抗うつ薬が治療で使用されることもあるでしょう。
抗うつ薬の使用について懸念がある場合は、主治医に相談してみることをおすすめします。
※参考「日本うつ病学会治療ガイドライン I.双極性障害 2020」
https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/iinkai/katsudou/data/guideline_sokyoku2020.pdf③その他の要因
甲状腺の機能低下も、ラピッドサイクラーの危険因子になるとされています。
その他にも、薬物の使用や双極性障害以外の精神疾患による影響もリスクになりえると考えられています。
ラピッドサイクラーの原因を断定することは困難です。
そのため丁寧な問診やヒアリングから、ラピッドサイクラーに移行したきっかけなどを聞き取り、本人の認識を確認することが大切です。
そのため丁寧な問診やヒアリングから、ラピッドサイクラーに移行したきっかけなどを聞き取り、本人の認識を確認することが大切です。
双極性障害ラピッドサイクラーの治療法
現時点で「ラピッドサイクラーに効果的」という明確な治療法は、残念ながらありません。
理由はラピッドサイクラーの症状が、人によって様々であるということが挙げられます。
また、双極性障害の治療は画一的ではなく、本人の状態に合わせて行われています。
ラピッドサイクラーを含む、双極性障害の治療法のメインは薬物治療です。
しかしその他の治療法でも、気分の変動を安定させること、変動の間隔を延ばすことが治療の目的となります。
今回は代表的な治療法を4つご紹介します。
①薬物治療
薬物治療は、ラピッドサイクラー時に基本となる治療法です。
双極性障害は、継続的な薬物治療が必要不可欠と言われています。
服薬を続けることで症状を安定させ、症状を自身でコントロールできるようになります。
双極性障害の治療で主に使用するのは、気分安定薬と抗精神病薬です。
気分安定剤は症状の予防のために使用することが多く、抗精神病薬は、躁状態の治療に効果があるとされています。
双極性障害の治療薬については、後ほど詳しくご説明します。
②心理教育
心理教育とは、本人が疾患について学習することで、病気を受け入れコントロールができるようになることを目指す治療法です。
ラピッドサイクラーなどの急性期では実施が難しい可能性がありますが、再発防止などに役立つと言われています。
記録などを用いて症状を客観的に捉えることで病気の理解を深め、回復に繋げていきます。そのため心理教育は、病気の初期に取り組むと良いとされています。
③家族療法
家族療法とは本人ではなく、その家族に働きかける治療法のことをいいます。
ラピッドサイクラーの治療には、家族の理解や協力が重要です。
症状が激しいときには、周囲の家族への負担も大きくなります。
そのため、家族に対してのケアという意味でも、家族療法は有効な治療法と言えるでしょう。
④認知療法
認知療法は心理療法と同様、ラピッドサイクラーの急性期ではなく、ある程度症状が治ったときに有効な治療法です。
特にうつ症状のときの否定的な考え方(認知)を、肯定的に捉える考え方を身につけることで、うつ症状を緩和させる目的があります。
双極性障害ラピッドサイクラーの治療薬
ラピッドサイクラーをはじめとする、双極性障害の主な治療薬は「気分安定薬」と「非定型抗精神病薬」です。
それぞれの主な効果や使用目的をご紹介します。
①気分安定薬
気分安定薬とは、双極性障害の治療の基本となる薬です。
躁状態とうつ状態のコントロールや予防に有効とされています。
なお、病気を根治するための薬ではないので注意しましょう。
特にラピッドサイクラー時に服用する、気分安定薬の主な使用目的は
- 急性症状(躁状態、急性うつ病)の正常化
- 再発予防
以上の2つと言えるでしょう。
また気分安定薬は、服用をやめてしまうと再発の可能性が高まるとされています。
主治医の指示に従って、継続的な服用が必要です。
②非定型抗精神病薬
非定型抗精神病薬とは、ドーパミンなどの神経伝達物質の受容体に作用して、そのバランスを整える薬です。
元々は総合失調症の治療などに使用されていましたが、双極性障害(特に躁状態)の治療にも効果があるとされています。気分安定剤と一緒に処方されるケースがほとんどです。
③その他
甲状腺の機能が低下している場合は、甲状腺ホルモン剤の投与により、症状が回復するケースがあります。
まとめ
ラピッドサイクラーは、双極性障害の中でも本人が苦しむ症状のひとつ。
再発防止のためにも、継続的な治療と服薬が大切です。主治医など専門家と相談をしながら、焦らず治療を続けていくことが、症状の安定に繋がるといえるでしょう。
ラピッドサイクラーをはじめ、双極性障害の対応に困ったときは、専門機関のほか、ケイエスガードでも相談を受け付けています。
ぜひお気軽にお問い合わせください。