身体表現性障害とは身体に異常がないのに、あらゆる身体症状が現れる精神障害です。
本人は身体の病気と信じて受診を繰り返し、精神的な問題を指摘されても本人は納得しないことが多々あります。
また本人にとって苦痛は現実であっても、周りからの理解を得られにくいのも特徴です。
一方で身体症状の訴えで家族など身近な人が振り回されて、疲弊することも少なくありません。
この記事では身体表現性障害の原因や症状から、患者との接し方のコツまで幅広く解説します。
病気の知識や適切な接し方を知れば、患者の治療の助けにもなり気持ちも楽になるはずです。
自分の身近な人が身体表現性障害かもしれないと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
※最近では、身体表現性障害は身体症状症と呼ばれるようになっています。このページでは、身体表現性障害という表現を使用します。
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身体表現性障害とは
身体表現性障害とは症状の原因となる身体の病気がないのに、繰り返し身体の症状を訴える障害をいいます。
女性に多く、吐き気や胃など消化器の痛み、しびれ、痛みなど複数の症状を訴えるのが一般的です。
身体に問題がないと説明されても認められず、ドクターショッピング状態になる方も少なくありません。
患者にとっては身体症状は現実なので、重大な病気なのではないかと不安を募らせてしまいます。
ストレスや不安、心理的な葛藤が背景にあるのですが、本人は精神的な問題について認めようとはしません。
治療としては薬物療法や心理療法のほか、環境調整が有効な場合もあります。
多くの方は慢性的な経過をたどり、生活に支障が出て引きこもりがちになる場合も多々あります。
症状別の5つのタイプ
身体表現性障害は症状が多彩であり、症状別に5つのタイプに分けられています。以下で詳しく解説します。
身体化障害
複数の身体症状を長い期間(数年単位)繰り返す障害です。
症状を引き起こす身体の病気が認められないので、検査や治療もあまり効果がみられません。比較的若い女性に発症することの多いのが特徴です。
転換性障害(身体表現性自律神経機能不全)
ストレスが身体の症状に置き換わり、頭痛や息苦しさなどを訴えます。
身体化障害と異なり、訴える症状は1〜2つに限られることが一般的です。
症状自体は数週間で収まることが多いのですが、再発しやすい傾向があります。
疼痛性障害(持続性身体表現性疼痛障害)
身体には痛みの原因がないので感じるはずのない痛みが続き、痛みにとらわれてしまう障害です。
痛みを感じる部位は、背中や頭に多い傾向があります。
心気症
重症な身体の病気にかかっていると、かたくなに信じる障害です。
専門医に問題ないと説明されても信じられず、ドクターショッピングを繰り返します。
病気へのとらわれから、抑うつ状態と不安が目立つのが特徴です。
身体醜形障害
自分の外見が醜いという思いにとらわれ、社会生活に支障が出てしまいます。
外見の欠陥や欠点は実際には存在しない・ささいなものですが、本人は重大なものだと信じています。
身体表現性障害の原因
身体表現性障害の原因は、大きく3つに分けられます。
- 性格や認知の解釈:身体の変化に敏感かつ繊細で、身体感覚の捉え方のゆがみがみられる場合が多くみられます。
- ストレスや葛藤:身体の症状に気持ちを向けることで、無意識につらい気持ちを避けようとします。
- 病気によって本人が得られる利益(疾病利得):身体の症状を訴えることで、働かなくてよかったり、心配してもらえたりします。嘘をついているわけではなく、苦しくてしんどい状態から無意識に身を守るために取っている行動です。
身体表現性障害の治療方法
身体表現性障害の治療方法は、薬物療法や心理療法がメインです。
つらい身体の症状を抑える薬を使いながら、こころの薬も併用し症状を和らげていきます。
同時に、身体症状の誤った解釈やストレスなどの原因に対して心理療法を行います。
明確なストレスがあり、環境調整が有効と判断されるケースも少なくありません。
身体表現性障害とうつ病の関係
2つの病気は別の病気ですが、身体表現性障害の方はうつ病を併発する場合も少なくありません。
身体表現性障害は長い経過をたどることが多く、本人は長く症状に苦しんでいます。
だんだんストレスが蓄積された結果、うつ病を発症してしまうのです。
接し方のポイント
身体表現性障害の方に振り回され、周りの人が疲れてしまうこともあります。
仮病を使っていると感じたり、わがままに思えてイライラしたりするかもしれません。
当事者だけではなく、周りの人も楽になるような接し方のポイントをお伝えします。
つらい気持ちを受け止め、話を聞く
本人のつらい気持ちを受け止め、話を聞いてあげてください。
身体症状の背景には、無意識に自分を認めてほしい・助けてほしい・関心を持ってほしいなどの思いがあります。
話を聞く時は聞いている側が疲れないよう、無理せず適度な距離感を持つことも大切です。
また、症状が落ち着いている時は、なるべく普段通りの生活が送れるように関わってください。
つらい気持ちを受け止めてくれるだけでも、患者さんにとってよい支えになります。
否定的な対応は避ける
しつこく身体の症状を訴えられると、怒りをぶつけたり無視したくなる時もあると思います。
否定的な対応が続くと、ストレスから訴えを助長させる結果を招いてしまいます。
たとえ身体の異常がなくても本人にとっては事実であり、嘘や意図したものではありません。
こころの葛藤やストレスを解消するために、身体の症状や病気の心配が現れている状態です。
身体表現性障害は、ストレスが症状に大きく関係するのが特徴です。
病気に対する知識をつけると、否定的に思ってしまう気持ちが楽になるかもしれません。
症状の訴えに振り回されすぎない
身体的な症状の訴えに振り回されすぎず、精神的な治療を受けられるようにサポートしてください。
本人は身体の異常が精神的なものだと認められず、身体の検査や治療を求めたがることが多々あります。
身体の治療や検査をしても症状を改善する効果は薄いので、結果的につらい期間が長引いてしまいます。
身体表現性障害の方が適切な精神科治療を受けるためには、周りの方のサポートがとても大切になります。
困ったら専門家に相談する
どう関わっていいか分からない・対応に疲れてしまった時は、専門家に相談してみてください。
身体表現性障害は長い経過をたどることが多いので、周りの方も長い期間関わることになります。
ストレスがかかって共倒れになる前に、精神科や心療内科などに相談することをおすすめします。
身体表現性障害はストレスと大きく関係しています
身体表現性障害の原因はさまざまですが、ストレスが大きく関係する病気です。
異常がないことを信じられず病院を渡り歩く・多彩な身体症状を訴え続ける姿に、周囲の方は対応に困る場合が少なくありません。
病気への理解を深めて、つらい気持ちを理解してサポートしてくれる存在であることがポイントになります。
身体表現性障害の経過は長期にわたることが多く、仕事など社会生活に支障が出ることも多々あります。
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