仕事で失敗を繰り返してしまうと悩む方の中で、原因が境界知能と考えられるケースが少なくありません。
境界知能とはIQが平均と知的障害の境目のことをいいます。
境界知能は人口の14%もいるにも関わらず、理解や支援は遅れているのが現状です。
この記事では大人の境界知能の特徴について解説していきます。
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境界知能とは
境界知能とは知的障害と平均値の間、具体的にIQ70〜84に該当する状態をいいます。
知的障害ではありませんが健常者よりIQが低いので、様々な場面で生きにくさを感じやすいです。
境界知能は「認知機能」という、人が社会生活を送るのに必要な機能が弱いのが特徴です。
認知機能とは、人が五感を通して得た情報をもとに現状を認識し、言葉の理解・計算・学習・記憶を行う機能をいいます。
認知機能が弱いと学習や対人関係に影響が出るので、イジメの対象になる・成績不振などで劣等感を感じやすいです。
感情のコントロールも苦手な傾向にあり、非行に走ってしまう子どもも少なくありません。
境界知能は社会生活上では支援が必要なのですが、境界知能単独では障害と認定されないのが現状です。
早期に適切な支援が受けられず、大人になり困難に直面するケースが少なくありません。
大人の境界知能の特徴
境界知能自体は生まれつきですが、社会に出て困難に直面することで初めて境界知能の存在に気付く方が多いのが特徴です。
仕事がうまくいかないので、境界知能の方は収入が少なく貧困になりやすい傾向にあります。
何もかもうまくいかず孤立することが誘因となり、うつ病などの精神疾患を合併する場合があるのも特徴です。
境界知能が気づかれにくい原因
境界知能は支援が必要な状況にも関わらず、気付かれていない場合が少なくありません。
ここでは境界知能が気づかれにくい原因についてまとめました。
外見上ではわからない
境界知能は外見では判断しにくいので、発見が遅れやすいのも原因の1つです。
境界知能の方は身の回りのことはほぼ1人でできるので、外見上でわかる問題になりにくいといえます。
本人・家族の自覚がない
境界知能である自覚がないまま大人になってしまう方も多いです。
家族や周囲の理解がある環境で、本人もさほど困らずに学生時代を送っていた方もいるためです。
本人が生きにくさを感じていても境界知能ゆえにうまく表現できず、家族に気づいてもらえない場合もあります。
境界知能の疑いを隠されていた
境界知能の存在に気づかれていても、家族が認められない場合もあります。
学校から指摘されても、自分の子に限ってありえないと思ってしまう親も少なくありません。
学生時代はなんとか過ごせていても、大人になってから境界知能の特性で不適応を起こしてしまうのです。
やる気の問題と誤解される
境界知能は時間はかかるものの知的障害よりはできることが多いので、やる気がないだけだと誤解されやすい特徴があります。
境界知能自体に、社会での認識や理解が不足している現状も深く関係しています。
感情のコントロール・気持ちを言語化するのが苦手という特徴も、誤解される原因の1つです。
個性と思われ見過ごされる
境界知能による特性が「個性」として見過ごされて、大人になってしまう場合もあります。
「のんびりな子」「不器用な子」「癇癪持ち」というように境界知能の特性を個性として受け止められてしまいます。
実際は本人は苦しんでいるにも関わらず、境界知能ゆえに苦しみの原因が分からない・伝え方がわからないのです。
個性と見過ごされて支援されないまま、1人孤独に悩み大人になってしまうのです。
境界知能の方が仕事で悩む原因
仕事は複雑な作業スキルを求められるため、境界知能だと様々な問題に直面します。
ここでは具体的に境界知能の方が仕事で悩みやすい原因を解説します。
不器用で要領が悪い
境界知能の方は認知機能が弱いため、不器用な方が多いです。
周囲からみれば簡単と思われる作業でもできず、説明されても説明の意味が分からないという問題に直面します。
力加減を判断するのも難しく、備品をよく壊したりする場合もあります。
マルチタスクも苦手で要領も悪いので、周囲をイライラさせてしまうケースも多いです。
抽象的で複雑な情報の処理ができない
理解力が低いので、抽象的な情報が入り組んだ内容になると処理は難しいです。
「分からないところがあれば質問してください」と言われても、不明点を明確にして質問をすること自体が困難です。
感情のコントロールができずカッとなってしまったり、わかったふりをして後で重大な問題になることもあります。
業務を覚えるのに時間がかかる
境界知能の方は学習の効果が得られにくいので、業務を修得するのに時間がかかります。
平均的な知能の方でも最初は分からないことが多いのでは、と思われる方もいるかもしれません。
境界知能の場合は、常識的にみんなが理解できる部分も分からないことが多々あるのが特徴です。
修得するまでの過程も困難で時間もかかりやすいので、教える側に根気と忍耐が必要になります。
社会的なコミュニケーションが難しい
境界知能の方は対人関係に問題を抱えやすいです。
仕事においては、お世辞・社交辞令などの社会的なコミュニケーションが難しいのが難点になります。
敬語が使えず上司に怒られたり、口車に乗せられて詐欺の被害に遭うといった状況に陥りやすいです。
仕事に限らず言語化するのが苦手で理解力も低いので、空気が読めない発言や場にそぐわない態度をとってしまうことがあります。
バカにされたくないプライドから、攻撃的になる・嘘をつくといった不適切な対処方法をとってしまう人もいます。
臨機応変に対応できない
普段は何とか業務をこなしていても、臨機応変に対応しなくてはいけない状況が起こると不適応を起こしやすいのも特徴です。
認知機能が弱いので、変化した状況を理解・タイムリーに判断して実行する過程を踏むのが難しいのです。
パニックになったり、他者からのアドバイスを聞き入れず一定の方法に固執してしまったりしてしまいます。
境界知能と合併しやすい症状
境界知能は生きにくさや劣等感を感じやすいことで、メンタルの不調を合併しやすいです。
ここでは代表的な症状についてお伝えします。
発達障害
発達障害は境界知能に合併しやすい代表的な障害です。
発達障害は生まれつきの脳の障害であり、症状は大きく3つのタイプに分類されます。
- 対人関係やコミュニケーションに問題があり、興味やこだわりに偏りがあるタイプ(自閉症、アスペルガー症候群など)
- 知的障害はないのに、読み書きなど特定の学習が極めて困難なタイプ‘(学習障害)
- 多動・不注意・衝動性が目立つタイプ(ADHD)
個人差が大きいのが特徴で、複数のタイプを兼ね備えている場合も少なくありません。
完治は難しいですが、支援や教育を受けることで安定して就労できている人も多いです。
うつ病
抑うつ気分や意欲低下など心の不調と不眠など身体の不調によって、日常生活に大きく支障が出ている状態がうつ病です。
境界知能の方は、うつ病を発症するリスクが高いです。
ストレスを溜めやすく、うまく発散することもできない特徴が原因です。
対人関係が苦手で劣等感や無力感を感じやすいこと、金銭的に困窮しやすいこともより一層うつ病のリスクを高めてしまいます。
うつ病は悪化すると自殺に至ってしまうケースもあるので、医療的介入が必要になります。
境界知能の「生きにくさ」は周囲の理解と支援で改善できる
境界知能の方は認知力が低い特性から困難さに直面しやすく、生きにくさを感じて生活しています。
社会が境界知能について理解し、早期に適切な支援を受けることで改善することができます。
境界知能の方が仕事を続けるには仕事上での配慮が非常に大切ですが、一般就労では困難なのが現状です。
発達障害やうつ病を併発している境界知能の方は多いので、障害者向けの就労支援を受けることができる可能性があります。
就労支援を利用すれば、境界知能にあった支援が受けられ就労の安定を目指しやすいです。
境界知能が原因と思われる仕事上の悩みを抱えている場合は、就労支援事業所で専門家に一度相談することをおすすめします。
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