アスペルガー症候群(ASD)など発達障害によくある特性として、こだわりが強いというのがあります。
学生時代はよくても大人になってから、仕事がうまくいかなくなるケースが少なくありません。
具体的には、特定の業務にこだわって仕事が進まない・場に合わせた行動ができないということが挙げられます。
この記事では、こだわりが原因で仕事がうまくいかない事例をもとに、具体的な対処方法を解説します。
こだわりによって職場でうまくいかず悩む当事者や、まわりにいる方の参考になれば幸いです。
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アスペルガー症候群の仕事でのこだわり例と対処法
アスペルガー症候群の「こだわり」が仕事に及ぼす影響は、特性や周囲の環境によりさまざまです。
よくある困りごとの事例をもとに、対処法をお伝えします。
事例①一度覚えた業務を、こだわりから変更できない
ある日Aさんは、新しい手順で仕事をするよう指示されました。
しかしAさんは以前の方法にこだわって、新しい手順になかなか変更できません。
新しい手順に移行するよう指導されるとパニックになってしまい、本人もまわりも困ってしまいます。
アスペルガー症候群には、一度覚えたことをなかなか変更できない特性があります。
そのため新しいことや方法が苦手で融通もききにくく、まわりに合わせるのが苦手です。
やり方をまわりに押し付ける場合もあるので、トラブルになったりパニックになったりするケースも少なくありません。
対策として、あらかじめ業務内容や手順には変更があり得ると考えておくと良いでしょう。
叱責しても改善は難しいので、新たなルールを根気よく説明するようにします。
事例②自分で決めた決まりやルーティンにこだわる
Bさんは椅子の角度などデスクまわりの環境が、少しでも変わると落ち着きません。
自分のこだわり通りになるまで、何度も繰り返し直してしまいます。
多くの時間を費やしてしまうこともあり、同僚からサボっていると非難されてしまいます。
自分だけの決まりやルーティンにこだわるのも、よくある例です。
ときにまわりに強要してしまい、トラブルになるケースがあります。
自分だけのやり方にこだわりを持ち、「ほどほど」にできないのが理由です。
一度気になると同じことを繰り返し言ったり聞いたりするので、しつこいと思われる場合もあります。
こだわり行動は完全にやめようとするのではなく、やわらげる方法を考えるのをおすすめします。
具体的にはルーティンを行う場所や時間のルールを決めて、決まりをまわりに押し付けないクセをつけるのが有効です。
もし言葉で説明してもなかなか改善できない場合、メモや図で示してルールを確認してもらうのもおすすめの方法です。
ストレスでこだわり行動が強くなる場合があるので、リラックスできる環境に整えてあげるのが効果的な場合もあります。
事例③こだわりから、指示されたことができない
Cさんは看護師として働いています。
ある日物品の片づけをしている時に、緊急でおこなう検査の準備をするよう頼まれました。
しかし、Cさんは自分が納得するまで物品の片づけを続けてしまいます。
結局ギリギリになっても準備が終わっておらず、怒られてしまいました。
こだわりから臨機応変に動くのが難しく、仕事に影響を及ぼす例は少なくありません。
必要以上にこだわって完璧を求めてしまう特性もあり、なかなか次の仕事に進めない場合もあります。
想像力の障害で先が予測できない不安から、突然言われた業務に移れなくなっている可能性もあります。
対策として、あらかじめ行う仕事の予定時間を決めておき、過ぎたら誰かに相談するクセをつけるのが有効です。
指示する側が仕事の途中で別の仕事に移っても大丈夫と声掛けをしてあげると、本人も安心します。
もし没頭しすぎて時間を忘れてしまうなら、アラームなどで時間管理を補助するのも良い方法です。
事例④細部にこだわりすぎる
Dさんは、会社のプロジェクトメンバーに選ばれました。
プロジェクトは期限が決められており、スムーズな進行が求められています。
しかしDさんは、文字のフォントや色の微妙な違いなどの細かいデザインにこだわり先に進めません。
結果としてプロジェクトに大幅な遅延が発生し、他のメンバーに迷惑がかかってしまいました。
学生時代は優秀であったのに、社会に出てつまづく方によくある例です。
仕事でも100点を目指そうと細部にこだわり、目の前のことに一生懸命取り組もうとします。
しかしマイペースで全体が見えないため、作業の遅れに気づかず失敗してしまうのです。
当事者としては「頑張っているのにまわりは理解してくれない」という想いをもっています。
ときに感情を爆発させてしまう場合もあり、同僚から危ない人と思われ孤立してしまうケースも少なくありません。
対策としてストレスをためすぎないように、まわりと状況を共有しながら話し合う体制を整えることが大切です。
指示する側が時間も含めて明確に、小出しに指示すると失敗しにくくなります。
また、疲れや睡眠不足によって、精神状態が不安定になっている場合もあります。
アスペルガー症候群の方は休息を取るのが苦手なので、まわりから声をかけて休息を取ってもらうようにしてください。
細部へのこだわりが活かせ、少しづつ経験が積めるような環境で働くのもおすすめです。
事例⑤食事へのこだわりから、会食ができない
Eさんは毎日決まったものを、決まった時間に食べています。
ある日取引先との会食に行くことになりましたが、出された食事に手を付けられません。
食事にいっさい手を付けないEさんをみて、まわりの雰囲気も悪くなってしまいます。
後日「わがまま」だと責められたことで、会食がトラウマになってしまいました。
アスペルガー症候群の方には、味覚などの感覚が過敏な方もいます。
食事のルーティンを決めているなど、本人なりのこだわりを持っている場合があります。
わがままや好き嫌いではないため、叱責や強制は逆効果です。
食へのこだわりがある場合は会食が必要な仕事を避け、まわりへ理解を得ると良いでしょう。
こだわりを強みにするには、働く環境が重要
アスペルガー症候群のこだわりによる困りごとは、本人の努力だけでは改善が難しい場合が多々あります。
本人が気づいていない場合や、どう改善していいか分からないというのが理由です。
まわりの適切なフォローによって、こだわりによる困りごとが改善するケースは少なくありません。
また、こだわりは悪い面だけではなく、うまく活かせる環境で働くと強みになります。
こだわりを活かしまわりの理解を得られる職場に転職することも、視野にいれてみてください。
「職場でうまくいかないけど、自分ではどうしようもできない」と悩む方には就労支援の利用も有効です。
就労支援は、アスペルガー症候群を含むこころの障害や病気の方の就労を支援するサービスです。
自分の特性を活かした仕事探しや、就労全般のサポートが受けられます。
就労支援を利用すれば、アスペルガー症候群のこだわりを強みに変えられる可能性が広がります。
就労支援に興味を持った方には、ケイエスガードの就労支援がおすすめです。
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強みを活かす支援が得意なので、こだわりを上手に活かした仕事を一緒に考えてくれます。
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