「忘れ物や遅刻、ケアレスミスが多い」
「空気が読めないと言われた」
「時間の管理ができず、上司に怒られてしまった」
そんな悩みを抱えたことはありませんか?
その悩みは、もしかしたら「発達障害」が原因かもしれません。
「発達障害」は、幼少期に診断されることが多いとイメージされがちですが、実際は大人になって就職してから自分で気が付くケースも多いと言われています。
そこでこの記事では、発達障害の特徴や気付くきっかけ、大人になってから発達障害と診断された場合に受けることができる支援について、詳しく解説します。
大人の発達障害とは
発達障害とは、生まれながら持っている脳機能の働き方や発達に偏りがあることで起こる障害のことです。
言語や行動、情緒などに特性が出ることを特徴としています。
発達障害は脳機能の発達が起因している障害のため、「大人になってから発達障害になる」ということはありません。
発達障害の特性は幼少期から現れますが、特性を「個性」として捉えられたり、周囲のフォローがあったりすることも多く、発達障害と診断されることなく大人になる人も多いと言われています。
そのため、就職などで社会に出た際、コミュニケーション能力や社会性を求められることに生きづらさを感じ、初めて自分の発達障害に気が付いたというケースもあります。
発達障害の種類と特徴
発達障害には、自閉症スペクトラム障害、注意欠陥多動性障害、学習障害、トゥレット症候群、吃音といったさまざまな種類があります。
発達障害は個人差が大きく、程度の強弱や診断を受ける発達障害の数が人によって異なることも大きな特徴です。
種類 | 特徴 | 気付くきっかけ |
自閉症スペクトラム障害 | 自閉症スペクトラム障害は、他者とのコミュニケーションの困難さや、強いこだわりがあるなどの特徴を持つ発達障害のひとつです。早ければ1歳半の乳幼児健康診査後に診断を受ける人もいますが、大人になってから気付いたというケースも。近年の調査では子どもの約20~50人に1人の割合で診断されるとも言われています。 | ・興味がない分野の集中力が続かない ・柔軟な対応が苦手 ・一方的なコミュニケーションをとってしまう ・相手の様子から気持ちをくみ取れない ・仕事の指示が理解できない |
注意欠陥・多動性障害 | 注意欠陥・多動性障害は、不注意や多動性、衝動性などの特性を持つ発達障害です。日常生活に支障をきたすことをきっかけに、大人になってから気付くことが多いとも言われています。 | ・不注意によるケアレスミスが多い ・忘れ物や遅刻を繰り返す ・スケジュール管理が苦手 ・約束を忘れてしまう ・整理整頓が苦手 ・相手が話しているのに話し出してしまう |
学習障害 | 学習障害は、全体的に知的発達に遅れがないにも関わらず、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力のうち、特定の分野で困難を示す発達障害です。小学校入学後に気付く場合がほとんどですが、苦手分野だと思い込み、幼少期に気が付かないこともあります。 | ・文字を声に出して読めない ・字を書くのに時間がかかる ・結果を予測したり、原因を考えることができない |
トゥレット症候群 | トゥレット症候群は、音声チックを伴った複数の運動チックが1年以上持続する、脳神経の疾患です。大人になってから発症することはありませんが、幼少期に未診断だったり、不安やストレスによって一時的に悪化することもあります。 | ・無意識に甲高い声やうめき声をあげてしまう ・まばたきの回数が多い ・首をかしげる仕草が多い ・意思とは関係なく汚い言葉を吐いてしまう ・急に飛び上がる |
吃音 | 吃音は、音の繰り返しや引き伸ばしなど、言葉をスムーズに話すことができない状態になる疾患です。2~4歳で発症することが多く、大人になるにつれて症状が目立たなくなることもあります。ただし、脳の病気や過度のストレスによって、大人になってから「獲得性吃音」を発症することもあります。 | ・最初の音を繰り返してしまう ・言葉がスムーズに出てこない ・音を引き伸ばして離してしまう |
仕事をしている場合は職場に伝えるべき?
大人になってから発達障害と診断された場合、職場に報告するかどうか悩むこともあるかと思います。
発達障害と診断されたからと言って、職場に報告しなければいけないということはありません。
もし勤めている会社が発達障害に理解がある場合は、報告することで配慮や支援を受けることができるでしょう。
しかし実際は、発達障害に理解があり配慮してくれる職場は少ないのが現状です。
辛い思いをすることも考えられるので、伝えるかどうかは慎重に考えましょう。
自分の仕事内容や職場の環境をよく考え、時には身内や専門機関に相談するのもおすすめです。
大人の発達障害と診断された場合に受けられる支援とは
大人の発達障害と診断された場合、就職や医療に対してさまざまな支援を受けることができます。
ここでは、主な支援内容について紹介します。
精神障害者保健福祉手帳の取得
発達障害専用の手帳はありませんが、発達障害は精神障害者保健福祉手帳の対象に含まれるため、申請することができます。
精神障害者保健福祉手帳を取得するかどうかは個人の自由ですが、等級によってさまざまなサービスや支援を受けることができます。
例えば、公共料金の割引や税金の控除・減免、障害者雇用枠での就労などが可能となります。
また、精神障害者保健福祉手帳の交付には、初診日から6カ月以上経過していることが必要になるので、診断を受けた場合はまずは主治医に申請について相談してみるとよいでしょう。
障害者雇用枠による就職
精神障害者保健福祉手帳を取得すると、障害者雇用枠で就職することも可能となります。
一般雇用に比べると、上司の固定や業務の限定、仮眠や時短といった精神面での配慮を受けることができます。
発達障害に対する周囲の理解もあるため、一般雇用と同等の給料を貰いながら安心して働くことができるのが大きなメリットと言えるでしょう。
一方、一般雇用に比べると昇給が少ないところがデメリットです。
障害者雇用は一般雇用とは異なり、年々業務量や責任を増やしていくわけではありません。
同じような業務内容を続けていくことが前提とされているため、大きく昇給することが無いのが現状です。
自立支援医療(精神通院医療)
通常の医療は原則3割負担と決められていますが、発達障害と診断された場合、自立支援医療(精神通院医療)を利用することができます。
世帯の所得や等級によって月額の上限負担額は異なりますが、原則1割負担で医療を受けることが可能です。
対象となる範囲は、通院での診察・投薬・デイケア・訪問看護などで、入院は対象外となります。
現在通院している医療機関が自立支援医療の対象となるのかどうかは、医療機関または居住する自治体に確認するとよいでしょう。
就労移行支援
就労移行支援とは、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスのことで、一般企業への就職を目的に利用することができます。
公的な認可を受けた「就労移行支援事業所」が、障害特性に合わせた「個別支援計画」を作成し、計画に基づいて就職相談やコミュニケーションの訓練、専門スキルの習得、就職先の紹介などの支援を行っています。
就労移行支援は精神障害者保健福祉手帳の取得が必須ではなく、主治医の診断書があれば利用することができます。
大人の発達障害に悩む方が相談できる専門機関
大人の発達障害と診断された場合、仕事やこれからの生活のこと、通院に関することなど不安に感じる方も多いでしょう。
悩みがストレスとなり、症状が強く出てしまうことも考えられるため、一人で抱え込まずに信頼できる人や専門機関に相談することをおすすめします。
ここでは、大人の発達障害について相談することができる専門機関について紹介します。
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターとは、発達障害を抱えた人への支援を総合的に行うことを目的とした専門機関です。
都道府県や都道府県知事が指定した社会福祉法人または特定非営利活動法人などが運営しています。
保健・医療・福祉・教育・労働などの関係機関と支援ネットワークを構築しているため、医療や仕事に関すること、精神障害者福祉手帳の取得に関することなど、さまざまな相談に対応しています。
また、発達障害の確定診断を受けていない人でも相談することができるため、発達障害の可能性がある人や悩んでいる人は一度問い合わせてみることをおすすめします。
地域若者サポートステーション
地域若者サポートステーションとは、働くことに悩みを抱えている15~49歳までの人を対象にした、就労に向けた支援を行う機関です。
通称「サポステ」とも呼ばれています。
厚生労働省が委託した民間団体などが運営しており、「身近に相談できる機関」として全ての都道府県に設置しています。
「働く意欲はあるけど、コミュニケーションが苦手」「人間関係に不安がある」など、働くことに対して不安や悩みを抱えている人の就労を支援しています。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターとは、障害者の雇用の促進及び安定を図ることを目的として、令和6年4月1日時点で全国に337か所設置されている機関のことです。
障害者の身近な地域において就業や生活面に関する一体的な支援を行い、就業による自立した生活を送れるようにサポートしています。
就労に関する相談だけでなく、金銭管理や日常生活に関する相談も受け付けている点が大きな特徴です。
ハローワーク
全国に設置されているハローワークでも、大人の発達障害で悩む人に向けての就労支援を行なっています。
ハローワークに障害者として登録することで、専門知識を持つ相談員が障害特性に応じた職業紹介や個別の求人開拓、ジョブコーチ支援、就職後の定着支援などの支援を一貫して受けることができます。
ハローワークの支援を受けるには精神障害者保健福祉手帳の有無は問いませんが、支援内容によっては手帳の掲示や診断書の提出を求められることもあります。
地域障害者職業センター
地域障害者就業センターとは、障害のある人に対して、就労に関する専門的な職業リハビリテーションを行っている機関のことです。
専門性の高い支援が特徴で、厚生労働省の定める研修・試験を修了した障害者職業カウンセラーや相談支援専門員、ジョブコーチなどを配置しています。
短期間に集中的にカリキュラムをこなし、当事者が持っている力で就職することを目的としています。
精神障害者保健福祉手帳の所有は必須ではないため、発達障害かもしれないと悩んでいる人でも気軽に相談することができます。
まとめ
この記事では、大人の発達障害の種類や受けられる支援内容、発達障害に関して相談できる専門機関について紹介しました。
大人になってから発達障害と診断されると、不安に感じる方も多いでしょう。
「仕事はどうしたらいいのか」
「日常生活はこれまでどおり送れるのか」
このような悩みを抱える方もいるでしょう。
発達障害は生まれながらの脳機能の発達が起因した障害であるため、本人の努力不足や家庭環境によるものではありません。
ひとりで抱え込むことがないように、まずは適切な医療と支援を受けながら、今までどおりの日常生活を維持していきましょう。
ケイエスガードでも発達障害の方への支援を行っています。
ケイエスガードは川崎駅から徒歩8分の、就労移行支援・就労継続支援B型事業所です。
得意を活かした就労支援を得意としており、自信を持って働けるよう支援しています。
大人の発達障害で仕事がうまくいかないという方は、1人で悩まずお気軽にご相談ください。