発達障害には、ASD、ADHD、LDなどがあります。
これらは、生まれつき脳の働き方に違いがあるという点で共通していて、各疾患の特徴や症状の現れ方は人それぞれです。いくつかの特徴・症状をあわせ持つこともあります。
この記事では、発達障害を代表する疾患、ASD、ADHD、LDの3種類をご紹介します。
また、相談先と支援についてもご案内します。
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■ASDとは
ASDは、日本語では「自閉症スペクトラム障害」と呼ばれます。
ASDは発達障害の一種で、相手の考えを読み取ることや自分の考えを伝えることを苦手とし、特定のことに強い興味・関心を持つことなどにより特徴づけられます。
以前は、「自閉症」「アスペルガー症候群」「広汎性発達障害」などの名称で呼ばれていました。
ASDの特徴と症状
ASDは大きく分けて、特徴的な2つの症状があります。
一つは「対人関係の難しさ」です。
ASDのある人は、他者と交流する際、大多数の人がするような反応や行動をしない傾向があります。
そのために人付き合いで誤解が生じやすく、適切なコミュニケーションが取れないことから、人間関係での難しさを抱えやすい面があります。
例)皮肉や例え話を文字通り受け取る、他人と目を合わせることが苦手
二つめは「こだわりの問題」です。
ASDのある人は、ある特定の物や場所に強いこだわり・固執、興味を持つことがあります。
こうした特性は、特に問題にならない場合があり、むしろその人の長所となる場合もあります。
一方、特性の表れ方によっては、日常生活や社会生活に支障が出ることもあります。
例)柔軟な考えをすることが苦手、感覚過敏または鈍麻
※ASDの二次障害として、精神疾患や不登校、ひきこもりなどが起きているケースもあります。
原因
ASDの原因はまだ特定されていません。現状では、先天的な脳の特徴に起因すると言われています。
また、遺伝要因と環境要因とが複合的に影響しているとも考えられていて、遺伝的要因が大きいとの指摘があります。
いずれにせよ、家庭での育て方など、生育環境が原因ではありません。
診断
医療機関において、ASDであるかを医師が診断します。
ASDの診断には、「DSM-5」という精神疾患の診断基準が用いられます。
DSM-5によるASDの診断基準には、「対人関係で持続的な困難がある」など複数の条件があり、これら条件を満たした上、その特性を知的障害などと結びつけにくいと判断されるとASDと診断されます。
ただし、面談による質疑応答なども踏まえた上、最終的に医師が判断します。
治療
現状、ASDには根本的な治療法がありません。環境調整やカウンセリング、症状に合わせた薬物療法が基本的な対処法になります。
環境調整とは、その人の特性に合わせた物理的な工夫や、家庭や職場で困り事が発生しにくくなるように、周囲の協力などで環境を整えることです。
薬物療法として、直接的に治療できる薬はありませんが、特性の一部や合併する症状に対して薬が処方される場合があります。
■ADHDとは
ADHD(注意欠如・多動症/注意欠如多動性障害)は、多動性(過活動)や衝動性、また不注意を症状の特徴とする発達障害です。
子どもだけでなく、大人になってからADHDと診断される人もいます。
ADHDの特徴と症状
ADHDの特徴は不注意・多動性・衝動性です。
不注意とは、集中力が続かない、注意力が維持できないこと。
多動性とは、じっとしていられないなど、行動をコントロールできないこと。
衝動性とは、衝動的な感情を抑えられないこと。
これら3つの特徴をもとに、不注意優勢型、多動性・衝動性優勢型、混合型の3つの診断タイプに分類されます。
不注意優勢型の症状
- ケアレスミスが多い
- 気が散りやすく、集中し続けるのが難しい
多動性・衝動性優勢型の症状
- じっと座っていることができない
- 絶え間なく話し続ける
混合型の症状
不注意と多動・衝動の特徴が混ざり合って現れるタイプです。
どのような症状がどの程度現れるかは人により異なります。
原因
現地点では、ADHDの原因は明らかになっていません。
ADHDとの関連性が疑われる要因として、遺伝的要因や環境要因がいくつか挙げられていますが、生まれつきの脳機能の偏りが引き起こすという説が有力です。
親の育て方やしつけが原因という説は誤りです。
診断
発達障害専門医のいる発達障害専門外来、精神科、神経科などで検査・診断を受けられます。
医療機関においては、医師が国際的な診断基準(DSM-5・ICD-10)を使用してADHDであるかを診断します。その際、医師が問診・心理検査・リハビリ評価を行います。
治療
ADHDには完治する治療法はありません。
しかし、症状に合わせた治療をすることで特異的な症状は目立ちにくくなり、穏やかな日常生活を送ることは十分可能です。
ADHDの治療には、心理療法、薬物療法、心理社会的治療などがあります。
薬物療法ではADHDの認可治療薬を服用し、心理療法として認知行動療法などが行われます。
心理社会的治療では、子供へのソーシャルスキルトレーニングや親へのペアレントトレーニングが行われ、学校との連携などによる環境調整が重視されます。
■LDとは
LDとは、日本語で「学習障害」のことです。
「読む」「書く」「計算する」などの能力に困難が生じる発達障害の一つで、学齢期に見つかることが多く、大人になってから学習障害の症状に悩み診断される人もいます。
※医学的には、SLD(限局性学習障害)の名称を使うこともあります。
LDの特徴と症状
LDは、知的発達の遅れがないにもかかわらず、「読む」「書く」「計算する」などを極端に苦手とする発達障害です。
読みにくさや書きにくさの程度や現れ方は人によりさまざまで、一つの能力だけに症状が出る人もいれば、複数の能力に症状が出る人もいます。
LDには以下の3種類のタイプがあります。
読字障害(ディスレクシア)
LDと診断される人の中で一番多いタイプで、文字を読むことに困難がある症状です。
例)文字や行を読み飛ばす
書字表出障害(ディスグラフィア)
文字を書くことに困難がある症状です。
例)漢字が苦手で覚えられない
算数障害(ディスカリキュリア)
数字そのものの概念や数量の大小、図形の理解などが難しい症状です。
例)九九がなかなか覚えられない
原因
学習障害の原因は解明されていません。現状では、先天性の脳の機能障害ではないかと考えられています。
脳の機能障害は生まれつきのものであり、家庭環境や育て方、本人の努力不足が原因ではありません。
診断
医療機関において、「DSM-5」や「ICD-10」という診断基準に基づいて診断されます。
初めに問診により、現在の症状や困り事、生育歴などを調べます。
脳波検査や頭部のCT・MRIなどにより、てんかんや脳の器質的な病気がないか調べます。知能検査などの心理検査を行い、医師が総合的に診断します。
治療
現在、LDを根本的に治療する方法はありません。
そのため、医学的な方法ではなく、教育面・生活面での環境調整や、カウンセリング、療育などを行うことで困り事を軽減していきます。
■相談と支援
発達障害について相談できる機関として、「発達障害者支援センター」「障害者就業・生活支援センター」「精神保健福祉センター」などがあります。
各センターが近くにない場合、地域の保健所でも相談できます。
■まとめ
発達障害の代表的な疾患は、ASD、ADHD、LDの3つです。各疾患は、それぞれの特徴や症状により分けられ、それらの現れ方や程度には個人差があります。各疾患の症状が重なり合って現れることもあります。
一人で悩まず、早期に医療機関や支援機関につながることが大切です。
先ずは発達障害者支援センターや就労支援施設などで相談してみましょう。
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