「相手の気持ちを考えないで、つい思ったことを口に出してしまう」「仕事が長続きせず、転職を繰り返している」など、一人で思い悩んでいませんか?それは発達障害のグレーゾーンによるものかも知れません。
そこでこの記事では、初めに発達障害のグレーゾーンについて解説します。次に3種類の発達障害の特性について説明した後、「なぜ、症状があるのに発達障害と診断されないのか?」と深掘りしていきます。
後半では、発達障害グレーゾーンの方の困りごとや対処法について解説。相談先となる支援機関も紹介します。
この記事を読めば、発達障害のグレーゾーンについての全般的な知識が得られます。
発達障害のグレーゾーンとは
発達障害を疑う症状がありながら、発達障害の診断がつかない人たちは「発達障害のグレーゾーン」と呼ばれます。発達障害の特性があっても、診断基準をいくつか満たさないために、確定診断を受けていない人たちです。
ここでいうグレーゾーンとは、医学的な診断名・疾患名ではなく、発達障害の傾向があるという状態を表しています。「診断基準をすべて満たしていないが、ASD(自閉スペクトラム症)の傾向が認められる」という言葉で医師から患者に伝えられます。
グレーゾーンだからといって、障害ではないと安心していいわけではありません。むしろこれからの対応しだいで大きな違いが生じるため、しっかりしたサポートを受ける必要があります。グレーゾーンという言い方だけでは、その中身に迫ることはできません。一つひとつの特性について理解を深めることで必要な対処方法が見つかります。
診断がつかない理由
全ての診断基準を満たさなければ確定診断には至らず、発達障害のグレーゾーンとなります。発達障害の特性があるにもかかわらず、どうして診断されないのでしょうか?
■体調などによる障害特性の変動
置かれた状況や環境、その日の体調により、グレーゾーンの人の症状は左右される傾向にあります。診察の日、たまたま全ての条件が良好なために障害特性がはっきり現れない場合、医師は診断を下さないことがあります。
■幼少期の情報が不明確
発達障害の診断基準に、幼少期から症状が存在していたことの確認があります。そのため、幼少期の記憶があいまいな場合には、医師は確定診断を下せません。
■医師の主観が影響
診断基準があっても、最終的に判断するのは医師であり、それぞれの医師の主観です。ある医師は発達障害だと診断しても、他の医師は診断しないという可能性もあります。
■発達障害の特性の多様さ
発達障害の特性の現れ方は「スペクトラム(連続体)」と表現され、それはグラデーションを描くかのようです。特性の有無で線引きできるものではなく、一人ひとり、その程度や頻度はさまざまです。そのため、確定診断に至らずにグレーゾーンとなる人たちも多くいるのです。
発達障害の種類と特性
あらためて発達障害の種類と特性について解説します。
発達障害は脳機能の障害です。つまり、生まれつき持つ脳機能の性質や働き方、成長段階での発達の仕方に偏りがあることから生じる言語や行動、情緒などの特性のことです。
発達障害は大きく分けると、以下の3種類になります。
■自閉スペクトラム障害(ASD)
ASDの人の特性として、他人との社会的関係の形成の困難さ、言葉の発達の遅れ、
興味や関心が狭く特定のものへのこだわりがあります。
具体的には以下の特性があります。
≪社会的関係の形成の困難さ≫
・相手の気持ちや状況を考えず、自分中心に活動しているように見えることがあります。
・関わりが一方的なため、仲間関係をつくったり、相手の気持ちを理解したりすることが難しい場合があります。
≪言葉の発達の遅れ≫
・言語の理解や使用に発達の遅れが見られます。
・相手と同じ言葉を繰り返して言う反響言語(エコラリア)があることも。
≪特定のものへのこだわり≫
・特定の対象に強い興味を示すことがあります。
・特定の習慣にかたくなにこだわることがあります。
■注意欠如多動性障害(ADHD)
ADHDとは、以下のような状態(不注意・衝動性・多動性)を継続して示し、その状態が社会的活動や学校生活を営む上で著しい困難を示す状態をいいます。
【不注意】
気が散りやすく、注意を集中させ続けることが困難であったり、必要な事柄を忘れやすかったりすること。
【衝動性】
話を最後まで聞いて答えることや順番を守ることが困難であったり、思いつくままに行動して他者の行動を妨げてしまったりすること。
【多動性】
じっとしていることが苦手で、過度に手足を動かしたり話したりすることから、落ち着いて活動や課題に取り組むことが困難であること。
※ADHDは、特性のあらわれ方により、以下の3つのタイプに分かれます。
・多動・衝動性の傾向が強いタイプ
・不注意の傾向が強いタイプ
・多動・衝動性と不注意が混在するタイプ
■学習障害(LD)
LDの人の特性として、知的障害や視聴覚に障害がないのに、「読む」「書く」「計算する」などの特定の領域で学習の遅れが見られます。
LDには以下の3つのタイプがあります。
【読字障害(ディスレクシア)】
・文字が正確に読めない、たどたどしい、片言のようになる。
・読解力が著しく低い場合がある。
【書字障害(ディスグラフィア)】
・文字の形や大きさをそろえて書けない。
・文字が鏡文字になる。
【算数障害(ディスカリキュリア)】
・簡単な計算ができない。
・図形が理解できない。
※1つだけ発症する場合もあれば、読み書きが難しいなど、読字障害と書字障害を併発する場合もあります。
グレーゾーンの人の困りごとと対処法
それでは、発達障害のグレーゾーンの人たちはどのようなことに困っていて、それをどのように解決したらよいのでしょうか。
うまく対処するためには、自分の障害特性をよく理解し、生活や仕事に対して適切な工夫をすることが大切です。
■グレーゾーンの人の困りごと
≪生活上の困りごと≫
・片付けができない。
・忘れ物やなくし物が多い。
・遅刻してしまう。
≪仕事上の困りごと≫
・あいまいな指示を理解できない。
・仕事の段取りが苦手。
・予定の変更にうまく対処できない。
≪人間関係での困りごと≫
・うまく雑談ができない。
・相手の気持ちに配慮せず、思ったことをそのまま言ってしまう。
・相手の話を聞きながら、自分の言いたいことを考えるのが苦手。
■困りごとへの対処
グレーゾーンの人でも、抱えている困難は決して小さくありません。対処するには、それぞれのベースにある特性を理解することが大切です。
医師からグレーゾーンの診断を受けたなら、症状の傾向について教えてもらい、自分の特性の理解を深めましょう。
発達障害の確定診断を受けた人たちがどのような工夫をして特性と付き合っているかを参考にして、自分の特性や生活・仕事上の困りごとへの対処に活用しましょう。
■困りごとの対処例
【生活場面】
・物の置き場所を決めておく。
・無理のないスケジュールを組む。
・時計を目につくところに置く。
【仕事場面】
・付箋やメモを使い、やることと持ち物を管理する。
・苦手な業務はあらかじめ周囲の同僚に伝えておく。
・仕事内容を細かく分けて、その間に小休憩を入れる。
【人間関係場面】
・相手の怒る理由が分からない時は、第三者に指摘してもらう。
・思うことをすぐ口に出す前に、ひと呼吸おいて考える。
・あいさつのタイミングを覚えておき、機械的にできるようにしておく。
各支援機関の活用
発達障害の診断がなくても利用できる公的支援機関があります。特性による困難さや生きづらさを一人で抱え込まずに、まずは支援機関の相談窓口を訪ねてみましょう。
【発達障害者支援センター】
発達障害のある人への支援を総合的に行う専門機関です。日常生活や仕事、人間関係など、幅広く相談に応じます。適切な医療機関や就労支援機関の紹介もします。
【障害者就業・生活支援センター】
障害のある人の生活と仕事について、両面から相談できる機関です。就職や就労のこと、健康・金銭管理についても相談できます。
【地域障害者職業センター】
障害者の職業リハビリテーションの拠点となる施設です。障害者が仕事について相談したり助言を受けたりできます。事業主に対する支援も行います。
【ハローワーク】
相談窓口には障害者専門の相談員が配置され、障害の種類や程度に応じてきめ細かな職業の相談や紹介、職場定着の指導などを行います。
【就労移行支援事業所】
一般企業への就職を目指す障害者に就労支援サービスを提供します。グレーゾーンの人でも「医師の意見書」などがあれば利用できる可能性があります。
※発達障害の症状についての相談や検査・診断は、医療機関の「精神科」か「心療内科」を訪ねましょう。
まとめ
この記事では前半、発達障害のグレーゾーンとその診断がつかない理由、発達障害の3種類などを解説しました。後半では、グレーゾーンの人の生活や仕事などの困りごとと対処法を解説し、支援機関なども紹介しました。
まずは自分の障害特性についてよく理解しましょう。その上で、確定診断のある発達障害の人と同じような工夫をすることで、特性や生活・仕事場面での困りごとに対処することが大切です。一人で抱え込まず、支援機関の相談窓口を訪ねてみましょう。
ケイエスガードでも発達障害のグレーゾーンの方への支援を行っています。
ケイエスガードは、神奈川県川崎市にある就労移行支援・就労継続支援B型事業所です。
自分のペースで活動できるので、発達障害の特性が心配という方でも一緒に工夫しながら通えます。
興味のある方は、ぜひご相談ください。