複雑性PTSDはPTSD(心的外傷後ストレス障害)の一種です。度重なるトラウマ体験が原因となり、様々な症状が現われます。
長年のトラウマ体験によって性格や人格が変化してしまい、対人関係の困難さや感情のコントロールが難しくなる傾向があります。
複雑性PTSDの方は不安やストレスを感じやすい傾向にあり、仕事で悩みがあっても1人で抱え込んでしまう方も少なくありません。
この記事では複雑性PTSDが仕事に与える影響と、働きやすい仕事の選び方について解説していきます。
複雑性PTSDで仕事がうまくいかず1人で悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
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複雑性PTSDとは
複雑性PTSDとは、トラウマ体験を長期間に渡って繰り返し受けることで発症する疾患のことをいいます。
症状は従来のPTSDと似ている部分もありますが、感情のコントロールや対人関係に支障がでやすいのが特徴です。
よくあるトラウマ体験として、幼少期の虐待・いじめ・パワハラなどがあり、大人だけではなく子どもでも同じような症状が現れることがあります。
複雑性PTSDは発症の原因となる出来事が明確ではないことが多く、支配関係にある者から受けたトラウマ体験の積み重ねによって発症します。
温かい支持的な関わりをしてくれる人が周りにいると、同じトラウマ体験を受けてしまっても重症化しにくい傾向にあります。
複雑性PTSDとPTSDとの違い
従来のPTSDと複雑性PTSDは、フラッシュバックや不安、頭痛など共通した症状もありますが、それぞれに特有の症状もあります。
複雑性PTSD特有の症状は以下のような症状があります。
- 性格変化:長年のトラウマ体験によって自分に自信が持てなくなっています。社会に対して不信感を抱き、警戒する様子がみられます。
- 対人関係の困難さ:他者との距離の取り方が極端になりやすいです。特定の人に執着し、少しでも自分の理想から外れると裏切られたと過剰に攻撃したり、自傷行為などで気を引こうとしたりします。その一方で、人を信用できず疑心暗鬼になるのも特徴です。
- 感情コントロールの不安定さ:ささいなことで怒りを爆発させ、トラブルに発展することがあります。トラウマ体験を思い出さないように、解離(嫌なことを思い出さないように、一時的に記憶をなくし感覚がマヒする)がみられる場合もあります。
複雑性PTSDの方は長期間繰り返しトラウマ体験を受けているので、こころの傷が深く治療に時間がかかる傾向があります。
複雑性PTSDの方が仕事でつまずく理由
複雑性PTSD特有の症状ゆえに仕事での困難さを感じやすく、周囲の人もどう関わっていいか悩んでしまうことがあります。
具体的にどの場面でつまずきやすいのかを詳しく解説しますので、今後の仕事への参考にしてください。
報連相が苦手
自分に自信がもてず他者を信用できないことが原因で、報連相が苦手な方が多いです。
報連相をすると自分が無能だと思われて傷つくのではと不安になり、1人で抱え込んでしまうのです。
過去に親などから支配的に理不尽に扱われていたことが影響し、自分の言ったことなど理解してもらえないと思ってしまうのも原因の一つです。
報連相で傷つくことへの恐れや人を信用するのにも時間がかかることから、報連相が苦手になってしまいます。
感情のコントロールが苦手
感情のコントロールが苦手で、感情の振り幅が激しいことも仕事に悪影響を及ぼします。
ささいなことでも怒りを爆発させ衝動的な行動にでやすいので、同僚など仕事上で付き合う相手とのトラブルに発展するリスクがあります。
その一方で、常に自分自身が無価値という思いに苦しんでおり、孤独感や抑うつ状態にもなりやすいのです。
感情の振り幅が極端で激しい様子を繰り返すので、周囲が対応に困ってしまいます。
腫れ物に触るような周囲の対応を感じとり、元々抱いていた「誰も自分を必要としない」「自分のことを理解してくれない」という思いを深めてしまいます。
感情のコントロールが苦手なことで、周囲との関係性や仕事ぶりに悪影響がでやすいのが複雑性PTSDの特徴です。
フラッシュバック・回避行動
フラッシュバックやつらい出来事を思い出さないよう回避する行動によって、仕事がうまくいかないこともあるでしょう。
突然つらい体験が思いだされることで、動悸や呼吸困難などの症状がでてパニックになってしまうことを、フラッシュバックといいます。
フラッシュバックは本人にとって大変つらいことです。そのため、フラッシュバックの引き金になることを回避する行動をとるようになります。
通勤や仕事中にフラッシュバックを起こす・回避行動で仕事に支障がでてしまい、離職を余儀なくされる場合も少なくありません。
下記の記事ではPTSDによるフラッシュバックの対処法について解説しているので参考にしてみてください。
対人関係がうまくいかない
対人関係における距離感の取れなさや不安から、安定した人間関係を築くのが苦手なのも特徴です。
複雑性PTSDの方は、繰り返しのトラウマ体験で自分には価値がない・誰にも愛されないという想いを常に持っています。
人を信用できず孤独感を覚えており、職場での人間関係に溶け込むことを難しく感じるでしょう。
一方で心を許した相手に過度に依存するのも複雑性PTSDの特徴です。
依存した相手が理想通りに動かないとこき下ろし、突然関係を断ち切るなどの行動をとってしまい、自分も相手も深く傷ついてしまいます。
人との距離感が極端なので、職場での人間関係に苦労する傾向があります。
複雑性PTSDの方が仕事を選ぶ際のポイント
複雑性PTSDの治療には長い期間を必要とすることが多いので、治療しながら働く期間が長くなります。
対人関係で苦労しやすい特徴があるので、仕事を長続きさせるには仕事環境が大変重要になることは知っておいてください。
具体的な仕事選びのポイントを以下で解説します。
短時間から徐々に慣らす
職場の人を含めた環境に慣れるまで、短時間勤務で慣らすことをおすすめします。
就労しても症状が落ち着いている・症状とうまく付き合いながら働けることを確認しながら、徐々に働く時間を増やすとよいでしょう。
調子が悪くなると睡眠が不安定になりやすいので、休息をしっかりとるようにしてください。
複雑性PTSDの方は仕事でストレスを抱え込みやすいので、無理をしないことが大切です。
トラウマの誘因になることをなるべく避ける
フラッシュバックを誘発することは避けて働ける職場を選ぶと、長続きしやすくなります。
複雑性PTSDで通院している場合、治療過程との兼ね合いもあるので就労する際は主治医に相談してください。
症状を理解して配慮してもらう環境で働く
人を頼り相談することが苦手という症状や特性があるので、周囲の理解が得られる職場を選ぶようにしてください。
特に就労し始めの時は疲れやストレスをため込みやすいので、病気をオープンにして就労するとサポート体制を得られやすくなります。
複雑性PTSDの方は、職種というより職場環境に留意して仕事を選ぶとよいでしょう。
仕事に不安があるなら就労支援の利用がおすすめ
複雑性PTSDは繰り返し長時間トラウマ体験を受けてしまったことで、自己の無力感に苦しみ性格も変化してしまいます。
様々な症状がみられますが、特に感情の不安定さ、対人関係に問題を抱えやすいことが仕事において問題になりやすいでしょう。
こころの傷は深く治療にも時間がかかる傾向にあるので、無理せず働ける仕事を選ぶことをおすすめします。
無理なく仕事を続けるには、症状や特性を理解してフォローしてもらえる職場選びが最も重要といってよいでしょう。
自分に合った仕事選びに不安がある方は、就労支援を利用して仕事を探すことをおすすめします。
複雑性PTSDの方は対人関係や相談を苦手とする方が多いので、症状や特性を理解してくれる専門家のサポートが得られると仕事選びの強い味方になります。
「仕事が長続きしない」「働けるか不安」など仕事のことで悩んでいる複雑性PTSDの方には、ケイエスガードの利用をおすすめします。
ケイエスガードは川崎市にある就労移行支援・就労継続支援B型作業所です。
得意や好きを活かした就労に向けての支援に力を入れており、無理なく通所できる環境が整っています。
体験や説明会を随時行っていますので、気になる方はぜひお問い合わせください。