統合失調症は「特別な病気」と思われることが多い疾患ですが、実はそうではありません。
日本の精神障害者の疾患割合では、統合失調症の患者数は気分障害の次に多いとされています。
生涯で100人に1人はかかるといわれる病気です。
統合失調症には発病年齢や症状によって、病気のタイプ(病型)が大きく3つに分かれています。
それぞれの病型によりたどる経過(予後)も異なるため、病気への理解や回復に役立ちます。
統合失調症にはどのような病型があり、それぞれどんな経過を辿るのかについて、詳しく解説していきます。
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統合失調症とは?
統合失調症とは、考えや気持ちをまとめることが難しくなる状態が続く病気です。
明確な原因は解明されていませんが、脳内の伝達機能のバランスがくずれることや、大きなストレスが関係しているとされています。
日本での統合失調症の患者数は約80万人といわれています。
一生の間にかかる確率は約100人に1人とされ、特殊な病気ではありません。
近年では新しい薬や精神リハビリテーションの研究開発が進み、多くの統合失調症患者が回復を期待できるようになりました。
※参考:厚生労働省HP
主な病状
統合失調症の症状は、陽性症状と陰性症状、中間症状としての認知機能障害の大きく3つに分けられるのが特徴です。
それぞれの症状について簡単にご紹介します。
陽性症状
- 妄想…「誰かに監視されている」など、実際にはあり得ないことを信じてしまう
- 幻覚や幻聴…悪口が聞こえたり、ないはずのものが見えたりする
- 思考障害…思考が混乱して、考えに一貫性がなくなる
陰性症状
- 感情の平板化…喜怒哀楽の表現が乏しくなる
- 思考の貧困…抽象的な表現が理解できなくなる
- 意欲の欠如…自発的な行動への意欲がなく自閉、ひきこもり…自分の世界に閉じこもる
認知機能障害
- 記憶力の低下…物事を覚えることに時間がかかるようになる
- 集中力の低下…目の前のことに集中したり、考えをまとめたりすることが難しくなる
- 判断力の低下…やるべきことを判断することが難しくなる
統合失調症の3つの病型と主な症状
統合失調症は病気の発症時期や症状によって、3つの病型に分けられます。
しかし必ずどれかに当てはまるわけではなく、複数のタイプに当てはまるケースも多くあります。
そのため、統合失調症は複数の病気が関係し発症する病気といえるでしょう。
では主な病型として、統合失調症の3つの病型の特徴と症状について解説していきます。
①破瓜型(解体型)
破瓜型は、10代の思春期〜20代の青年期までに発症することが多い統合失調症です。
症状の急激な変化はあまりないのですが慢性化しやすいといわれています。
統合失調症の中で一番多いタイプが、この破瓜型です。
主な症状
破瓜型の主な症状は陰性症状です。意欲の減退、感情の平板化などから発症することが多く、幻覚や妄想などの陽性症状はあまりみられないのが特徴です。
慢性化すると陽性症状が現れ、人格の変化などが起こることもあります。
陰性症状により外出する頻度が低下して、人との交流を求めなくなり、ひきこもりに至るケースもあります。発病当初は病気と判断するのが難しく、不登校や学力低下がきっかけで発見されることも破瓜型には多いといわれています。
②緊張型
緊張型は、20歳前後の青年期に発症することが多い統合失調症です。
突然発症し、激しい興奮状態や昏睡状態を繰り返すことが特徴です。
主な症状
緊張型の主な症状は、突発的な運動性障害です。
突然あちこち動き回る、奇声をあげるなどの症状のほか、身体の緊張により奇妙な姿勢になったり、じっと動かなくなったりします。
一定期間の治療で症状が改善することが多いことも、緊張型の特徴です。
早期治療により社会復帰するケースも多くありますが、治療を止めると再発しやすい病型でもあります。
③妄想型
妄想型は、30歳前後に発症することが多い統合失調症です。
他の病型に比べて発病年齢が遅く、3つのタイプの中では一番症状が軽いとされています。
主な症状
妄想型の主な症状は、幻覚・妄想といった陽性症状が中心です。
感情の平板化などの陰性症状が現れることは少ないため、社会的なコミュニケーションも比較的良好です。
周囲の人からも病気と思われないケースも多いようです。
一方で、妄想や幻覚といった症状から不安が大きくなり、警戒心が強くなることがあります。
刺激に過敏になったり、怒りっぽくなったりといった症状が現れることがありますが、人格は保たれているのが妄想型の特徴です。
病型の予後
統合失調症には3つの病型があり、それぞれ発症年齢や症状・特徴が異なることが分かりました。
では、統合失調症は発症してからどのような経過をたどるのでしょうか。
病気の医学的な見通しのことを「予後」といいます。
次からは、統合失調症の3つ病型それぞれの予後について解説します。
破瓜型(解体型)の予後
破瓜型の予後は、あまり良くないとされています。
発症年齢が低いと症状が慢性化しやすいため、長期的な視点での治療が必要です。
治療を中断すると再発や再燃を繰り返すことも多くあります。
緊張型の予後
緊張型の予後は、比較的良いことが多いとされています。
早期治療を行うことで症状が消え、社会復帰できるケースも多くあります。
ただし回復したからといって治療を中断すると、再発と寛解を繰り返す可能性が高くなります。
再発の回数が増えると陰性症状が目立ち始めるケースもあり、継続的な治療が必要です。
妄想型の予後
妄想型の予後は様々です。症状が部分的に消えたり、完全に消えたり、慢性化することもあります。
発症した年齢が遅ければ、その分予後は良いとされています。
感情の平板化やひきこもりなどの陰性症状が少ない妄想型は、他の病型に比べて予後が良好なケースが多いといわれています。そのため社会生活をしながら治療を続けることができるのが、妄想型の予後の特徴です。
医療や専門家の力を借りながら、病気の特性を理解しよう
統合失調症は発症した年齢や症状によっては長期化しやすく、医療との連携が不可欠な病気です。
早期の適切な診断と、継続的な治療が回復のポイントです。
また、発病が早いほど病気と判断するのが難しく、不登校やひきこもりに至ってしまうケースが多いことも特徴です。
統合失調症と思われる症状に見舞われた、もしくはご家族や友人に症状が見られると感じた場合は、迷わず専門医の診察を受けてください。
統合失調症はどの病型でも、急がず焦らずステップアップしていくことが大切です。
長期的な治療や段階的なリハビリによって、社会復帰も十分可能です。
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